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01.誇り高きエチオピア
02.シミエン国立公園
03.入院!
04.悪の巣窟、ナイロビへ
05.おれたちゃマサイ!
06.赤道直下のケニア山
07.アフリカ大陸最高峰へ
08.アウトドアグッズマニア
09.偽札発見!悪徳ガイドにリベンジ
10.楽園
11.マリンディの悪夢・・・
12.悪の巣窟で停滞
13.密猟者が潜む山
14.ナイル川でラフティング
15.深夜の訪問者
16.黒人のホビット、ピグミーに会う
17.何を求めていたんだろう
18.大虐殺記念館
19.コンゴに行きたい!
20.内戦に遭遇

 
 
 
 

4. East Africa
mail_07 / 2nd,MAR,2003 @ Moshi : TANZANIA
アフリカ大陸最高峰へ

 

あこがれの山、キリマンジャロに登頂した。
標高は5895m、文句無しのアフリカ最高峰である。
山頂で朝日を眺めた、眼下には巨大な氷河が見える、でもここがそんなにも高い場所だとはイマイチ実感がない。気温はマイナス15℃、それにしても寒い。
下山時、山頂を目指す人々と何度もすれ違う。皆、薄い空気の中をつらそうに登っている、その中の一人、白人女性が話し掛けてきた。
「山頂から来たの?」
そうです、と答えた。
「まあ!じゃあ登頂したのね、私も早く上に行きたいわ。頂上はさぞ素敵だったでしょうね」
「とにかく登頂おめでとう!」
そう言って、彼女は何度も「Congratulations!」と繰り返した。たった今、この頂上にいた自分ならわかる、頂上付近のつらい登り道の最中に他の登山者を祝福する余裕なんて僕にはなかった。
ふと気付けば、彼女が登頂を祝福してくれた初めての人だった。遠くを眺めるとどこまでも果てしなく雲海が広がっていた。

一体自分はいつからこの山に登りたかったのだろう。5年も6年も前からだ。そして、アフリカで山に登ったときは、いつもキリマンジャロの事を考えていた。
北アフリカ最高峰のモロッコのジャベル・トゥブカル、西アフリカ最高峰マウント・カメルーン、エチオピアのシミエン、そしてアフリカNo.2のケニア山。どの山もこの山を登る為の前哨戦、高度順化の意識があった。
この時、初めて自分がキリマンジャロに登ったのだという実感が湧いてきた。たいして難しい山ではない、お金さえ払えば素人にでも登れてしまう山である。
でもやはり、自分にとってはキリマンジャロは特別だったのだ。
「キリマンジャロが終わったんだ・・・」
達成感と脱力感が絡まったのか、アフリカに着て初めて涙を流した。

***********************

2月23日。ナイロビから国境を越えてタンザニアに入国、「キリ」登山のベースタウンであるモシへと向かう。翌日からツアーアレンジのためツアー会社を巡るが、あまりの値段の高さに閉口ものである。キリマンジャロはどの山とも違い、ツアー会社を通しての申し込みが厳守となっており、ガイドの雇用が義務となっている。つまり個人での登山は不可能なのだ。
しかも、外貨不足のタンザニア政府が「ドル箱」と重視するこの観光資源には当然ながら「外国人料金」が設定されている。それがべらぼうに高い。
入場料は一日30$(以前は25ドルだったが最近さらに値上げした。この事実を知らされたときは一瞬登るのをやめようかとさえ思った)
山小屋は一泊50$、キャンプをしても40$。
レスキュー代が20$
と、標準的な5日間の登山で政府に払うお金が370ドル。
これは世界的に見ても、最も高い5000m峰だと思う。
そしてこれにさらにガイド(ガイド無しの登山は禁止)、ポーター、食料、そして会社の取り分が入るので、大抵のツアーは500$くらいからスタートする。

どうにかして安くあげる方法はないのか?果たして抜け道はあるのか。
安く上げるには速登することだった。5日のルートを4日で行くことにした。これだけで、70ドルも違ってくる。そして、抜け道もあったすなわちツアー会社を通さないことだ。
まず、ゲートまで出向いてガイドを見つける。そのガイドとすべての交渉をする。しかしここで、一つの問題が・・・キリマンジャロの公園事務局に提出するのはツアー会社の公式書類じゃないといけない。ここにも抜け道はある、この書類もツアー会社から一人10ドルで買うことができるのだ。
そうすると500ドルのツアーも、4日間でマラングルートから登り、ポーターをつけないで荷物も自分で担げば、290ドルのPark feeプラス、ガイドに一日8ドル、チップが一日10ドルとずいぶんと安くなる。

でも僕らはまだまだひねくれていた。
マラングルートはコカコーラ、最近人気のマチャメルートはノーマル、そして登る人が少ない一番急でタフなウンブエルートはウイスキールートと呼ばれている。
コカコーラはいやなので、ウイスキーを選択、そしてウンブエルートを通常より1日少ない4日間で登ることにしたのである。
ウイスキー!ストレートで!

1日目
ウンブエのゲートへと向かう。ツアー会社を通さなかったことをちょっと後悔した一日だった。ガイドとポーターは朝から酔っ払って到着。それもおそらく前日に払った前金を使い果たして。しかも、ポーターの一人は20歳の女の子。(ここモシにはポーターは約3000人いて、そのうち女性は10人)
酔っ払いの二人はゲートでレンジャーに捕まりお仕置き。仕方ないのでその女の子「ステラ」と一緒に登る。なんか変な図式だった。僕と彼女は小さいリュックのみで、その横で僕達の荷物を担いだ20歳の女の子がハーハー言っている。
う〜ん。
今日は1400m登って森の中でキャンプ。もう400mほど上がるはずだったが、他の2人が来ないので行けず。その原因となる、ガイドともう一人のポーターは一時間以上遅れて到着。そのくせ、「グッドサービスグッドチップ」と言う。どこがじゃ(怒)!

2日目
朝から直登。しばらくするとキリマンジャロが姿を現す。ジャイアントロベリアや、グラウンドセル、ケニア山で見かけたお馴染みの植物の脇を通り抜ける。 今日はすばらしく体が軽い。Baranco Hutではかなりの団体がテントを張って高度順化中。通常は2日目でここまで、しかし僕らはさらに高度を上げて4800mのアローグレーシャーまで直登。標高を一気に2000mもあげる。ここまでは高度順化のため4日かける人だっているのだ、まったく馬鹿なことしてるなあ・・・でも疲れは全くない。
4800mまで来るとさすがにかなり寒い。東には巨大なアロー氷河が見え、西には尖ったラバタワー、そして正面には雪を抱いたキリマンジャロの大きな体が見える。氷河のふもとまで水を汲みに行った。天上の最高のキャンプサイトである。

      

3日目
頂上ご来光の為、12時半に出発。眠いよ・・・
やはり無茶なプランであった。この日はほとんど眠れていない。
昨日の朝7時に出発してから、24時間で標高を3000mも上げようとしているのだ。それも0mから3000mではなく3000mから6000mに。
それでも体は嘘のように軽かった。馬鹿みたいに冗談を言いながら笑って登った。もう先は見えていた。「なーんだキリマン余裕だったなあ」とさえ思った。

午前2時30分。
しゃべる元気もなくなっていた。
寒い・・
着れるものは全て着てしまった。
気温は−10度まで落ちていた。ザックの中の水も凍って飲めない。スニッカーズも固くて食べれない。所々に見られる凍った斜面を注意しながら進む。ここはキリマンジャロのノンテクニカルなルートではもっとも急で危ない場所。足を踏み外したら下まで一直線だ。
冷たい風が容赦なく吹き付け、酸欠なのか頭がフラフラする。
なんだなんだ、キリマンジャロ、なかなかつらいじゃないか・・・

6時00分。アフリカの最高峰に立つ。
Highest point in Africa という標識にタッチして、 やったーと叫んだ。
実はこの登頂5分前に、ガイドを解雇した。安いつけがまわって来た。彼は今まで何度も自分のプランを変えに変え、この日に限ってはルートを知らないのか他のパーティーについていく始末。懐中電灯さえも持っていなかった。そしてそのペースがあまりにも速く、何度も確認したのに山頂に日の出40分前に着きそうになり、「どこか風のないところで休んで山頂に行こう」と最終的に提案すると、
「やはり山頂で日の出を見るのは止めて下山しよう」と言い出したのである。僕はまったくもってご来光派ではないのだが、だったら何であんな暗い中寒くてつらい思いをして登ってきたのだ、と思い、反対した。
「そんなのはいやだ、ほかのパーティーについていくことはないじゃないか。僕達のしたいようにしよう、これは僕らのパーティーで、君は僕らのガイドだ。僕らの行きたいように行こう」と言うと
「俺は山を知っているんだ、俺に付いてこないなら、金を返してやるから、さよならだ」と逆切れをしたのだった。
・・・さすがにこのガイドのわがままっぷりに、きれた。
「うん、わかった、じゃあバイバイ。後はコンパスと地図で下るから、もういらないよ。はい」と言ってお別れをしてやった。
全てをこいつが台無しにしたかに思えた。せっかくの大陸最高峰の登頂をも・・・しかし、僕だってただアフリカを旅してきたわけじゃあない。

アフリカ人から学んだ術を使った。
「いやなことは1分でリセット、ああもう楽しい」術。心を入れ替え山頂に向かったのだった。
(さらに信じられないことに、このガイド後から付いてきて、チップはどうするんだ!と吠えた)
この日、山頂から3000m高度を下げて、ムウェカのキャンプサイトに着きテントを張ると、のびたくん並みのスピードで眠りに落ちた。ながいながい一日が終わった。

4日目
今日はたった2時間半ほど下山するだけ。
下山口にはさすがにたくさんのお出迎え。お土産やから出張こじきまでいる始末。
ムウェカの町からモシのホテルへと戻ってどきどきしながらの給料決算。チップは一日の給料と同じ一日一人5ドル。酔っ払いのピーターと女の子ステラ、ポーターの2人はガイドと違ってとてもいい人だった。ピーターはただでビールが飲めるとわかると早速2本のビールを注文し、酔っ払いながら「おお、ミスター、もっとチップくれよう」とねだった。結構かわいいので、そのままほっておいた。
キリマンジャロはやはりキリマンジャロだった。雄大で圧巻で厳しくて・・・
ケニア山に負けず劣らずいい山だった。

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