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01.Warm heart of Africa
02.天空の孤島、ムランジェ山
03.貰ったお札は1700枚
04.環境問題
05.沈没天国、ハラレ
06.無人のトレッカーパラダイス
07.ブラックアフリカ一、壮大な遺跡?
08.ビクトリアフォールズ
09.カラハリ砂漠の宝石、オカバンゴ
10.天空の王国
11.アフリカ民族最終回、ヒンバ族
12.アフリカ病−第二ラウンド
13.Cape of Good Hope

 
 
 
 

5. South Africa
mail_03 / 5th,JUN,2003 @ Harare : ZIMBABWE
貰ったお札は1700枚

 

マラウィからモザンビークを経て、途中バスもぶっ壊れ、14時間後ジンバブエの首都ハラレ到着する。もう夜なので町に人の姿はなかったが、ネオン輝く巨大ビル群にびっくり仰天。まるで砂漠の中に忽然と現れるラスベガスのようだった。(かなり大袈裟だが、ここはアフリカなんでね、それくらいびっくりした)
なんせ、東アフリカ随一の都会といわれたナイロビよりもすごいのである。

  

そして気づけば、今日で12泊目だった。
ここハラレは、アフリカの沈没Cityとして知られている。(沈没=旅人が一個所に長く滞在すること)。その一番の要因は物価の安さであろうし、その次にここが物のあふれる都市であり、サハラ以南のアフリカで日本人が集まるのがこのハラレくらいしかない、というとこであろう。
なぜにナイロビより都会なのに物価が安いのか。それはこの国の経済が崩壊しており、闇両替が蔓延っているためである。ハラレは、西アフリカを旅しているときから、「安い安い、行くなら今だ」との噂が聞こえていた。それは以前、タイやインドネシアの通貨が大暴落したときに似ている。
実際ここに来てみて、物価の上昇もあり、期待していたほどの安さはないのだが、それでも安い。今泊まっている宿は一泊一部屋500円(一人250円)、ビールは一本30円、ご飯はローカルで50円から、そして「国内で」もっとも高級なシェラトンホテルの豪華ビュッフェが900円なのだ。
これは銀行の公定両替レートが1US$=800Z$に対して、闇ではその倍の1700Z$で替えれてしまうことに起因する。大袈裟に言えば全ての物が半額で買えてしまうということだ。

しかし、海外からの輸入品は闇レートで計算されているようなので、安くないということになる。絶頂期(?)の去年の秋には、闇のレートが公定の10倍だったいうからすごい。
しかし、この状況を安い安いと喜んでばかりもいられないのである。
まず、国民が苦しんでいる。インフレに次ぐインフレ、我々旅人から見れば安い物価も、この国の人の立場から考えれば激高だろう。インフレして、ドルがどんどん高くなっても、同じように人々の給料があがるわけではないのだ。
ハラレが大都会だというのは既に述べた。でも、大都会だからこそ、この経済の破綻が一層物悲しい・・・きれいなショッピングセンター、4斜線の道路、人も車もまばらだ。

そもそも、なぜに経済がここまで破綻してしまったか、その原因は主に国の政策による。
この国の本当の独立は20年前と他のアフリカ諸国に比べて遅いが、それまでは一部の富を持った白人が支配する国だった。もちろん、独立してからも経済を牛耳っていたのは白人である。このアフリカとは思えない、ヨーロッパの一都市のようなハラレも、実は南アのヨハネスブルグ同様、白人の作った街なのである。

2年ほど前から、国家主義の台頭か、国の政策として、その白人たちを追い出すことにした。グリーンボンバーと呼ばれる退役軍人を使い、白人の大土地所有者をその土地から追い出していった。グリーンボンバーは、首都ハラレの外資系オフィスにも暴力を持った圧力を加え、それによって、国外に退去した企業も多いという。

上の事例は既にアフリカの各国で起きてきたことの繰り返しでもあり、その度に、そしてアフリカ各国が独立した時に持っていた考えは以下のようであったと思う。
「国が白人の手から黒人の手に移れば、白人が握っていた富も黒人に戻ってくるのだ」と。
しかし、どの国でも、事はそんなに簡単に運ばなかった。会社運営に携わった人材が少なく、教育水準も低い、経済界に人脈もなければ、貨幣経済も最近始まったばかりなのだから。

ここ、ジンバブエでも同様のことが起こったのだと思う。
ある白人のジンバブエ人は言う。
「俺の○▲万エーカーの土地では、黒人の労働者を500人雇っていた。それが今回の政策により、俺自身も土地を失い、500人の黒人も失業者となった。土地は今は荒れていて、農作物なんて何も取れないのさ・・・」
このようなことが、至る所で起きたのだと思う。白人から黒人にバトンタッチしてみた、しかし誰も農場の経営、会社の経営をできるものはいなかった。会社は潰れ、農業地はただの荒れ野原と化した。そして、農業などを主な外貨獲得手段としていたジンバブエは外貨不足に悩み、急激なインフレ、経済の崩壊が進むこととなる。
さらには「泣きっ面に蜂」状態で台風や早飢が農場を襲ったという。

「土地を白人の手から黒人の手へ」
結構なことだと思う。長い目で見て、苦しんでも自分たち黒人の力で建国していくべきだと思うのだ。「植民地政策のせいで俺たちはいつまでも貧しいんだ」と二度と言わないためにも。
しかし、そのやり方に問題がある。白人から奪った土地は結局、政府の権力者へと渡った。賄賂に次ぐ賄賂社会。今の大統領は78歳である、先の選挙でも不正が取りざたされて、ヨーロッパ各国からのバッシングに合っている。権力を握った人間というのは恐ろしく、また醜いものだ。
さらには、こんなに国民が苦しんでいるのに、この国はコンゴに兵隊を派兵しているのだ。

そんなわけで、安い安いと、非常識に喜んでばかりいられないのである。
もちろん、治安も悪化している。
僕の友達が頭を割られて強盗に遭ったのがここハラレなら、別の友達が全財産盗まれてしまったのもジンバブエなのである。この一ヶ月で日本人をターゲットにした事件は4件、ある意味ナイロビ以上だ。
さらに、「とほほ・・・」的な話を続ければ、
インフレのせいでお札の価値が急落。
自分が所有する2000年のガイドブックには1USドル=38ジンバブエ$となっているが、今の銀行レートは800Z$、闇では1700Z$。ちなみにこの国の最高紙幣は500Z$、すなわち35円。トッホホウー。(3年前1Z$=3円、今1Z$=0.07円)

銀行にはお札がなくなってしもうた。閉鎖している銀行も多いし、「お金を下ろす人は3ヶ月前に申請してください」という状況になっているという。日本で1万円札が急に500円の価値になってしまったら、みんなが1万円札ばっかり持ってお札がなくなっちゃうよねえ、多分それと同じだと思う。
先日闇両替をしたら、最高紙幣が不足しているということで、全部100ドル札になってしまった(100Z$=7\)。100USドルが170000Zドル、すなわち!100ドル札が1700枚もきたのである。そんな数のお札見たことあります?
もう尻ふけるね。
だから買い物も結構大変。スーパーのレジにはいつも長蛇の列、なぜなら店員さんがお札を数えるのに時間がかかっているから。1回の買い物で100枚200枚お札を出す。もう、モノポリーしてるんじゃないんだから、ねえ。

毎日ATMには100人を超す長蛇の列、外貨がないということでガソリンも買えないのでガソリンスタンドは休業、その周りには誰も乗ってない車が100台くらい列をつくってむなしく並んでいる。(ちなみにこれから国立公園に行きトレッキングをするときの、クッキングストーブのガソリンが必要なのだが、いったいどこで買えばいいのだ?)タクシーは闇市でガソリンを買っているので割高。

こんな都市初めてである。ものすごい都会だけに、この経済崩壊がさらにもの悲しい。
今日は木曜日だが、今週、ほとんどの商店は閉まっていた。月曜日から金曜日まで5日間のストライキに突入したからだ。映画館も閉まっていて、やることもないのでこうやってインターネットカフェで、だらだらと文を書いている。ちなみにインターネットは3時間で120円くらい。もう20時間以上やってしまった。
このストは現政権反対を訴えるものだが、当初、ストの初日には大行進が起きて、警察や軍隊の発砲もありえるので、食料を買い込んで宿に閉じこもっていなさい、という日本大使館からのお達しがきていた。でも、そんな暴動は起きなかった。
政府が、警察、軍隊を出して町を制圧した(そんな大袈裟じゃないけど)。それに怖れてか、誰も行進に加わらなかったのだと思う。
おそらくこの国の人々はもう疲れきっているのだと思う。

78歳の独裁者に早く寿命が訪れることを願う。

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