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インドで1勝1敗 (インドバングラ)
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ダッカに到着して3日目、ぼくはタイのバンコクまでの航空チケットを買った。当初の予想通り、バングラデシュとミャンマーの国境は閉ざされていた。つまりここからはタイに飛ぶしか術はなく、このダッカが、ぼくの陸路移動の、一応の最終地点であるのだ。
 夜になって、ぼくは最後にダッカでのお気に入りの場所へと行くことにした。それはここに到着した日に偶然見つけた場所だった。

 ぼくは街のメインストリートをまたぐ歩道橋の上に登った。その真下には3斜線の道路が走っている。街灯もないその暗い道路には、数え切れないほどのサイクルリキシャやオートリキシャがうごめいていた。これを見るかぎりでは人口密度世界一というのもうなずける。車といえばバスくらいで、それ以外は隙間もないくらいぎっしりとリキシャが並んでいた。
 信号が変わりリキシャワラーがと呼ばれるリキシャこぎが一斉にペダルを踏む。その彼らを見ていると、人の出す熱気を強く感じ取れる。人間は生きているのだ、この地球のどこでもぼくらはこうして生命を吐き出している。
 ぼくは眼下の道路を長い間眺めていた。

 明日にはタイにいるのか…
 なんだか信じられないな。きっと何もかもが違うのだろう。これまでは徐々に徐々に文化の違いというのを感じてきた。しかし明日は国を飛び越してしまうのだ。気候、人種、そして文化、全てが一瞬で変わってしまうのだ。そしてここまでの人力の道が途切れてしまう。それは悲しいことだった。
ここが陸路の終点か…
 そしてパキスタン、インド、バングラデシュと続いてきたカレー文化圏も今日で最後だ。飽きるほど食べたカレーも、畑ばかりで景色の変わらなかった街も、行く先々で出会った旅人、やさしかった現地人、そして常にこちらを騙そうとしたインド人、数え切れないほどの人々に囲まれたこと。いつか全てがみんな恋しく、愛しくなるんだろうな。
 カルカッタで出会った日本人の女の子が面白いことを言っていた。「前回インドに始めて来たときは、何もかもが衝撃的で辛くて、負けたって思って帰国したから、それが悔しくて今回は勝ちに来んだ」と。
 果たしてぼくはどうだろう。
 明日このインド圏を離れるのは悲しいことだった。それが悲しいということは、少なくても負けはしなかったんじゃないだろうか。でもだからといって勝った気はしないのだ。
 さながら一勝一敗一引き分けってとこかな。

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