2004年1月1日、13時30分。メキシコシティーを発つ。
いよいよ最終目的地へ向け出発だ。宿を後にするとき、なんともいえない感慨が胸をこみ上げてきた。どうしようもなく、寂しいような、むなしいような。友達と何日も何日も一緒に遊んで、別れて、一人家に帰る道中に感じる寂しさに似ていた。
しかし、ここには別れて悲しくなるような人はいない。
じゃあなんだ、きまってるさ、旅が終わろうとしているからだろう。
もう、日本がすぐ手の届くところにある。時に懐かしみ、帰るのを楽しみにしていた母国への帰還は今となっては嬉しくもなんともない。
しかし、当たり前だが現実はやってくるし、どんな祭りにも、いつかは終わりが訪れるものなのだ。
僕らの乗ったバスはアメリカ・カリフォルニア州サンディエゴと国境を分かつ町、ティファナ行き。48時間の長時間耐久(?)バスだ。
いつもならバスに乗車するとその8割は寝てしまう自分。24時間バスなら20時間は寝てしまうというのに、今回はなぜかそこまで眠くならない。
どうやらチョッピリ感傷的になっているみたいだ、まあそれも悪くない、そのままにしておこう。
どこまでも広がる大規模な畑、時折見えるサボテン、きれいに舗装された道路をバスは走った。真横にスパッと広がる大きな大きな地平線に、大きな大きな太陽が沈んでいった。
「ああ、あの先はもう日本なのだな」
と僕は思った。そして、この地平線に太陽が沈んでいくダイナミックで大陸的な景色は、もうしばらく見ることはないのだろう、と。少なくとも僕の母国、ちっぽけな日本では。
予想より1時間早く、47時間でバスは国境の町ティファナに着いた。実は僕はここに以前来たことがある。その時の滞在時間はたったの数時間だった。タコスを数個食べて、腹が痛くなって、アメリカに逃げ帰って行った。
あれは5年位前だったかなあと、過去を振り返ってみると、当時僕は20歳。ゲッ!もう8年も前でやんの。年を取ったなあ、シミジミ・・・
メキシコの出国審査は何も無し。アメリカもイミグレーションでビザ免除の紙に記入して、6ドル払うだけの簡単な手続き。そして僕らは無事アメリカ合衆国に入国した。ここから友人の待つサンディエゴの町まではトロリー列車で30分。
たった一本の国境線を越えただけなのに、車窓から広がる風景はもう100%アメリカだった。
ついにアメリカへやってきた、最後の国にやってきた。日本があまりにも近い。
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