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1.水下痢のハンガーノック
2.風の谷・フンザ
3.氷河の音と、星降る夜と
4.パスー氷河へ
5.4730m、クンジュラーブ峠

 
 

1.中国政府につかまる
2.パミール高原を駆ける
3.天上の世界から下界へ
4.ロバートからの手紙

 
 

1.カラコラムのサイクリストたち
2.旅行データ
3.海外サイクリングマニュアル

 

 

Karakoram Range
2. 風の谷・フンザ

 

弱り果てながら起きたのは昼近く。今日は近くの昨日目指していた村まで行こうということになった。そしてこの日の走行距離は、ツーリング史上最低の6キロ。そうたったそれだけでMinapinに到着してしまったのだ。
Minapinはカラコラムハイウェイを5Kmほど外れた、ダートの道を上がったとこにある小さな村。そののどかな村には1件のゲストハウスしかないがそのゲストハウスが最高に素敵な場所だった。ラカポシが背後に見え、青々とした広い庭にはサクランボの木々。
「勝手にとって食べていいよ」とオーナーが言った。

Minapinからフンザの中心Karimabadまでは33Km。フンザは日本人旅行者の間では「風の谷のナウシカ」のモデル地として有名だ。春には一斉に杏の花が咲き「桃源郷」とも呼ばれている。

     

確かに、ここはすばらしい場所に違いなかった。カリマバードはカラコラムハイウェイから数キロ離れた小高い丘の上に位置する街で、周囲は7000m級の高峰に囲まれていた。
ある日、街の一番上にあるBaltit Fortに上がると地元の男が親切に教えてくれた。
一番南にGolden Peak、Diran、Rakaposhi、Hunza Peak、そしてUltar T・U。それは、今まで登った一番高い山が3776mの富士山という男にとっては、ここから見える山々は山であって山ではない別の領域に感じた。

   

しかし、出会う旅人誰もが絶賛するカリマバードも、僕とアンジェラの中ではこれといって特別な存在にはならなかった。僕らには途中通ってきた名もなき小さな村や、自転車を休憩した時に見上げる景色の方がよりすばらしかったのだ。「風の谷のナウシカ」のモデル地というのはこのカリマバードだけを指すのではなくて、フンザの村全体を指すのだろうなと思った。乾燥しきった地に、神々の山々から恵まれた雪解け水が沢となって流れ、茶色の地肌に緑の村が生まれる、そんな風景は確かにあの映画で見られた風景だった。
ついに、僕は風の谷へとやってきたのだった。

 

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