満ち足りた生活

何はともあれ、暇だなあと思う。
南向きの窓から入る日差しはポカポカと暖かい。

あたりを見渡すと、生活に必要なものはすべて揃っている。足りないものは何もない。
趣味の道具も一頻り。サーフボードもあるし、夏用のウェットも真冬用のウェットもある。スノーボードはゲレンデと新雪用のボード。バックパックは小から大まで10個もある。
自転車も車もある。部屋にはこれから読もうとしている未読の本が溢れ、まだ観ていない映画のDVDもある。
食べ物もしっかりと食べられて、仕事もちゃんとあって、親も兄弟も健在、かわいい甥までできた。

すべてが満ち足りすぎていて、これでもういいはず。たぶん、必要なものは何もない。
ここからどこへだって行ける。

だけどどこへも行かず、なんとなく物足りなさを感じながら、脱力感や空虚感を感じながら、何もしないで、ただただ、ここにいるのはなぜだろうか。
探せばいくらだってやることはあるのに、何もしようとしないのはなぜだろう。

満ち足りているのに、何かが、どこかが、きっと欠けている。
ここに必要なのは、欲望や、欲の塊のようなものなのかもしれない。

autum

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