仙元山100 (第二回マイルの部)

コースを試走すること5回。
実行委員会でのファミレスでの幾度のミーティング。
ああでもない、こうでもない、と試行錯誤が飛び交うメッセンジャー。

やりたくてやっているだけだから、手間だからとかめんどうだからとかはもちろん一切なくって。お金を払って参加者となる大会も楽しいけれど、手弁当で自分たちで作り上げる催しのなんて楽しいことか、しかも家から歩いて5分の場所で。

仙元山のモーニングランのコースをお遊びでぐるぐるまわって100kmにしようと春に実施した第一回。何事もプレ大会や事前準備と経験って重要だなって今回何度思っただろう。「次は100マイルだよ」ってお遊びで言ってみたもの特に実施する計画もなく。でも「二回目はないの?」って声がチラホラと聞こえてきて、コロナでこんな状況だから2回目の100マイルってやつをやろうかと、中心的に動いてくれる近所の仲間を募ったのがちょうど2ヶ月前。

  • コンセプト
  • コース
  • エイドのこと
  • だれを対象としているのか
  • 制限時間やレギュレーションのようなもの

決めることはたくさんあった。
レースをやるわけではないから、あくまで自己チャレンジとしての100マイル。ほとんどのレースにおいて、トップ選手でない我々の敵は常に自分か昔の自分しかないわけで。コンセプトは自己チャレンジ、対象者は近所の友人や、友人の友人まで。エイドは第一回を中心的にまわしてくれたヒデさんと、数多のトップ選手のサポート経験を持つ(もはやその道のプロ)竹さんがやってくれることになり、安心しておまかせすることになった。さらにはハテさんという強い援軍も得た。

コースはこのあたりのトレイルを知り尽くしている泰輔と、ちえちゃんやおもちゃんが工夫してなんとか32kmに。というのも7.5kmのコースを100kmまではいいとしても(よくないか笑)、さらに60kmプラスするのは無理だと思ったし、もっといいトレイルもたくさんあるから、なんとかそれらを繋げられるんじゃないかと思ったのだ。長野や山梨の壮大感にはとてもかなわないけれど、都会にほど近い場所としてはとてもいいコースになったと思う。なぜなら我々には山だけではなく海もある。夜は退屈かもしれないけれど、相模湾と富士山が見える絶景のロードもあえて入れた(気持ちよかったよね?)。
実際に3人で試走したら、31.2kmと微妙に距離が足りない。せっかくだから二子山もピストンしちゃおうか、と累積をさらにプラスすることに。これが結果的にはこたえたけれど、この界隈の主峰(といってもみんな低いけど)が五山入って、信越五岳ならぬ、三浦半島五岳か?とちょっと盛り上がった。ちなみに他の4つは仙元山、乳頭山、大楠山、三ヶ岡(大峰山)。

こうして秋晴れの中、出走者として集まってくれた26名とそれぞれと繋がる応援やペーサー、地元のエイドボランティアの有志など、合わせて80名もの人たちと一緒に、最高のイベントが実施できた。その人それぞれの関わり方と楽しみ方があって、それぞれの都合やスタイルに合わせて、一同に楽しんでくれたのが最高だなとしみじみと思った。

さて、出走者として走った自分自身のこと。
10月には珍しく270kmも走った。その前月も前々月も100kmくらいしか走っていないので、完走できるか不安だったけれど「完走はできるでしょう」というおもちゃんの一言で「そっか、完走くらいできるレベルか」とちょっと強気になって、安心して望んだ、すなわち入り方は雑だった。あまりにも近所だったからか忘れ物したらとりに来ればいいか、くらいな気持ちだった(笑)

100kmと100mile(160km)は違う、と石川弘樹が説教的に言うけれど、たった一回100mileを走っただけではその違いは腑に落ちておらず、ただ長いだけだと聞いて聞かぬふり。100mileが他の距離とは別で尊く格式高い競技だとは、今も思ってはいない。ただ、違いのわからない男は2回目の100mileで、ちょっとはその違いに気がついたかもしれない。ただ長いだけ、そのちょっと(でもないか)の長さに適応するのが難しいのかもしれない。今回わかったのは100kmまでは余裕で楽勝なんだ。もう少し言うと130kmまではそこそこ足も残っていた。最後の30kmの長さにやっぱり適応できなかった。これはいかんな、経験が不足しすぎている、と思ったけれど、それを挑戦と捉えれば、またいろいろ工夫するところがあって、その難しさがみんながハマるところなんだろうか?(流川か沢北かよw)

今回のコースは1ループ32km、累積獲得標高(上りの合計)1300m。5ループの合計が160km、6500m
各ループのタイムは以下。
4:53 / 5:17 / 6:11 / 6:51 / 8:43
こうみても、明らかに5周目で死亡している。

Loop 1
4:53
森戸海岸に4:30に集合、受付、ブリーフィング。
今回は昨年出走したアメリカのRio del Lagoを大いに参考にした。西海岸のそのレースはとてもゆるくて、当日でもペーサーになれて、ブリーフィングは出走前に10分くらいMCがマイクで注意事項を言うだけだった。それにならって、今回も10分前にさくっとブリーフィング、そしてすぐに「5:00ですよー、スタートしましょう」と静かに開始となった。海岸といえど住宅街が近いのでサイレントスタート、絵的には映えない(笑)

いきなりかっ飛ばして見えなくなった人がいた。我々はみんなとチャットしながらゆっくり走ったつもりだけれど、今思えば南郷公園へも走って登っていたし、明らかなオーバーペース。とにかくみんな揃って早かった。ゆっくりいこうと事前に取り決めをしていた友人たちもそのペース。二子山でちょうど日の出を迎え、東京湾越しに見える千葉がまるで高山の稜線のように圧巻の景色だった。

北尾根は走りやすく軽快に。三浦半島の「ニュウ」へもサクリと着く。ここから畠山がもっとも苦手の魔の区間。1.3kmと書いてあるのに、全くつかない、「どんだけだよっ」といつも文句を言いながら走った。そこからは軽快な下り、ロードに出て不動橋。あれ、5時間で周回したときよりも20分以上早いかも、やばい・・・

一応のんびりと大楠トレイルからの南葉山霊園へと下ったつもり。でもロードはキロ6:00、ゆっくり走るってむずかしいな。毎回お世話になった芦名口のファミリーマートへ寄っておにぎりを買う。ここは今回の36時間で汗だくのランナーがどんどん入ってきて何事かと思っただろうな・・・・
林道を上っていると同僚が応援に駆けつけてくれててほっこりと。大楠山では揃ったみんなで記念撮影をした。長いコースを巡回しているので、一度ペースが変わるときっと二度と会えることはないから。

海沿いのロードは最高に気持が良かった。ここでも気がついたらキロ6:00で走っていて、心拍は140。せめて130に落とそうとペースダウンしてちょっとだけマイペースに。足が残っているので一番楽しい周回だった、調子に乗るタイプだからなんだか余裕だな〜と思ってしまった。32km地点のエイドに着くと、朝はなかった豪華エイドが出来上がっていて、いろんな人がいてくれて本当に感動した。結構長居して、ゆっくりとリスタート。

Loop 2
5:17
日差しが強くなってきてちょっと暑い。一応積極的に塩熱サプリと水分を摂取した。たまにジェルを飲んだけど、飲むとすぐにエネルギーに変換されるのがわかり、やっぱりこのようなチャレンジ系にはジェルが適しているのかなと思った。南郷公園では遠回りして絶景のイチョウを楽しむ余裕がまだあった。2周めはまだランナーがパックしてて、二子山からのピストンでいろんな人とすれ違えて楽しかった。疲れたけれど、結構淡々と間違いなくオーバーペースで進む。先程エイドには15分以上いたから、ループの実際のタイムは5:00ちょうどくらい。ここからは辛いところだけれど、エイドではペーサーの岡部が待ってくれていた、本当に心強い。

Loop 3
6:11

計算では1周目と2周目が5:30、3周目は6時間、4周目は6:30、最後は7時間位を予想タイムとしていた。すでにだいぶ貯金がある上に、3周目もエイドでの休憩を抜かすと5:50くらいで決して悪くないペース。ただやはりバテてはいた。二子山を超えると暗くなってきて、夜とともにやってくる魔の時間。とても辛く急に走れなくなるのだけれど、そのうち復活するのはわかっているので気長に待つ。カフェイン入りのジェルを何度か摂取したが、やはり錠剤のカフェインを次回は持ってきたほうがいい。昼はガバガバ水を飲んでいたのに、夜になったらほぼ水を飲まなくなってしまった。おまけに塩熱サプリもとらなくなる。これがこの後の不調の要因でもある。

畠山は相変わらず辛かった。でもロードは岡部が丁度いいペースで引っ張ってくれた。ファミマエイドでコーラを買う。大楠山の林道は急に極寒になるのでアームカバーを上げる。今日はSohkuyaboでイベントが行われていたらしく、聞こえてくる音楽にちょっと癒やされた。大楠山林道は平らな場所だけ走る、大楠山からは適度に走って下る、その後の5kmのロードは6:30フラットで走る。魔の時間には全く走れないのに、復活の時間を迎えると死んだ足も蘇ってくれるから不思議だ。

Loop 4
6:51

4周目はチームにりょうちんが加わった。りょうちんにはペーサーがいなかったので「夜は誰かと走ったほうがやっぱりいいよね」と我々に同行。さすがにペースが底まで落ちてきて、兎にも角にも眠い。立ち止まって眠ることはなかったけれど、久しぶりに何度か幻覚を見た。でも経験値から幻覚だというのがわかっていてちょっと面白くもあった。100kmを越えれば、残りは60km、予想タイムより遥かにいいペースだった。前回の100mileも100kmまでは余裕じゃんと感じたように、今回も結構余裕だなと100km地点で感じてしまった学びのない自分。

登りはとにかく歩く、フラットはできるだけ走る。心拍が走っても上がってくれなくなった。水は多少飲めどもサプリ系は飲むのが億劫になりやめてしまったのが、またまた反省点。芦名口のファミマエイドに着くと気分を変えたかったのもあり、おでんを座ってのんびり食べてみた。気持ちがリセットされたし、眠眠打破をのんだら眠気もどこかに行ってくれた。のんびりと大楠山までは登る、下りはまた復活の時間を迎え、ロードに下りる頃には軽快に。岡部のリードで6:30で走る。
森戸海岸に着くとペーサーの岡部とはお別れになった。故障しながらペーサーを買ってくれたので、2周が限界だったとのこと。ほんと感謝しかない。

Loop 5
8:43
エイドではオカピが焚き火にあたって寝ていたので、自分もその誘惑に負けそうになる。でも、ここで甘やかすと体が固まってしまうのはわかりきっている。雑念を振り払い、早く出ようとりょうちんを誘って出発した。出てすぐにちょっと前からモモ裏のハムストリングにかなりの違和感があるのを思い出し、竹さんにニューハレを貼ってもらわなかったことを後悔した。
頑張ればサブ30も見えている。ただ、出し切って早く走るのが目的なのか、時間を気にせず楽しみ尽くすのが目的なのか、その間で揺れていた。朝のすき家に寄りたかったし、エイドも楽しみたかったし、開いていれば関口牧場のソフトも食べたかったので、今回は楽しむ方だったじゃないかと、本来の目的を思い出した気がした。ただ、悪く言えば辛い選択肢から楽な方へと逃げたのかもしれない。

またしても魔の時間がやってきて、眠くて動けず、かつ足が残っていない気がした。とくに登る足が残っていない、仙元山の登りがつらい。でもどのコースの登りも、これが5回目であり、すなわちこれが最後だと思うと、歩いているトレイルが愛しく気持ちが良かった。またね〜と心のなかで何度か言った。

ハムの違和感がどんどん高まってくる。大好きなフラットな北尾根すら満足に走れない。
乳頭山から地獄の畠山、そこからの下りもハムの違和感しかなく一歩一歩が辛い。もう朝が来てしまったので、念願の朝定を食べようと言うことになり、4人ですき家に寄ってしまった。この気持ちの緩みは、レースを楽しむものとしては二重丸なのだが、この後の痛みなどを考えると、ここが起点となってしまったのかもしれなかった。食べながら氷をもらってハムを冷やした。豚汁とご飯がめっちゃうまかった。

すき家を出るとハムの痛みはやや収まったのだが、その痛みが膝の裏の靭帯の部分に移行して、一歩一歩で痛むようになってしまった。阿部倉までは歩いて、当然階段も歩いて、南葉山霊園までの下りは顔をしかめながら走った。芦名口のファミマからの大楠山林道は完歩。大楠山の下りも、もはや完歩。ロードに出たのに全く走れない。しかたなく前田川でアイシングして一発復活を狙うが、アイシングも効果がなかった模様。

原因は疲労と水不足、塩分不足で硬くなりだしたハムを、すき家で止まってアイシングしたことにより更に硬くしてしまい、膝裏の筋肉の付着部がひっぱられて痛みを出したのではないかと、あとで教えてもらった。

5kmのロードも全く走れないので、とにかく歩く。もはや歩くのも一歩一歩が痛い。時間だけはくさるほどあるのだけれど、辛すぎちゃってコンビニに入ってロキソニンが売ってないか探す始末(もちろん売ってないw)嫁さんに電話してロキソニンを持ってきてほしい〜と懇願する始末(作戦失敗)。りょうちんに先に行ってくれと伝えるも、ここまできたなら一緒に行こうと泣けるコメント、まじでありがとう。

ミニストップでソフトを食べて、もはや遠足モード。
三ヶ岡の麓から森戸海岸までは、下りが足が痛すぎて進まず、1時間もかかってしまった。

さあ、そしてようやくやってきた。走ったら5時間かからないコースを、ほぼ歩いて9時間、長かったけれどそれでもギリギリ32時間だった。ゴールでは家族含め大勢のサポーターやエイドスタッフ、地元の友人が迎えてくれて本当に嬉しかった。だって、ゴールが家から5分だよ、なんだか信じられないのだった。

その後、まったく歩けもしないので、ヒデさんに車で家まで送ってもらい、シャワー後に氷風呂に下半身をつけ、氷バケツに足をつけ、ロキソニンを飲んで、自転車でゴールへと戻る。
16:30、制限時間30分前に最後のランナーがゴールした。最後のランナーは今回出走した26人目のランナーだった、すなわち全員100mile完走。100mileなのに、完走率が100%、そんなのありえる?きっと最初で最後のビギナーズラックに違いない。
地元のコミュニティのみんなに支えられ、出走者の仲間にも支えられ、その他のアウトドアやランニングの友人たちも暖かいフルサポート。規模が小さいローカルならではの、最高の二日間だったと思う。

学び:
ウェア:
上:ファイントラックとキャプリーン半袖のコンビ。気温が10度 – 20度まではこれだけで行ける。寒くなったらアームカバー、もっと寒くなったらエアシェッド・プルオーバー、とグローブ。低体温になった場合のみ、CAP4などがあれば十分。
下:パタゴニアストライダーショーツ、またずれなく32時間快適。
足回り:初めてHoka Challenger。Nikeのように滑らず、ロードもトレイルもなかなか良かったように思う。靴下もワセリンを足に塗り、豆も爪の死亡もなし。けっこういいかも。
テーピング:ニューハレXテープを捻挫対策で。他違和感があった股関節と腰対策に前日から独自にテーピング。途中で腰も痛くなり竹さんに貼ってもらって復活。やはり超重要。ロングレースは貼れるだけ貼るべし。

補給:何でも食べられるので、好きなものを食べればいいのだが、ジェルはやはりエネルギーにすぐ転化されるので有効。
水や塩タブレットなどは定期的にカウントしてノルマとして採取すべき。
カフェインタブレットは試しておきたい。
胃薬、ロキソニン、下痢止めは万が一を考え常備しておくべき。
もちろん今回はお楽しみご近所ランだからいらなかったけれど、100mileのレースならあったほうがいいかも。100kmはいらないかな。

それにしても、個人的にはウェスタンステイツでシルバーバックル、すなわち24時間切りをしたいと願っているのに、余裕だと思っていた目標が遠すぎる現実を突きつけられた。今回のはガチじゃなくって遊びだとしても、目標があまりにも遠い。こまったなあ〜・・・

2 Replies to “仙元山100 (第二回マイルの部)”

  1. 楽しく読ませていただきました。手作りの素晴らしい大会ですね。次回は目指せWS100 シルバーバックル!

  2. 困った感があまり伝わらないけど、あと7か月トレーニング頑張りましょうw
    あと、次回はバックル作って欲しいなーw

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