海で満足して遊びきってしまった我々。このままトリンコマリーにいようかどうしようか、と思ったけれども西欧人みたいにじっとしているバカンスが苦手な自分。移動をすることにした。というか、そもそも彼らみたいなバカンスは望んでないのであった。楽しそうだよなあと思うことはあっても、じゃあ同じような期間で毎年バケーションがあったら同様なスタイルをするかというと、やっぱり移動するだろうな、バタバタと一ヶ月でも二ヶ月でも。それは12日間の旅でも変わらない気がした。
リゾートに滞在してのんびりするならば、それはここではなくてもいい気がした。やっぱりスリランカを肌で感じたい。旅がしたいのだ。
鉄道に乗ろうと思った。それもそして一番景色がいい区間を。
朝に海とプールで十分遊んだ後、トリンコマリーのバス停へと向かった。A/Cバスはなく、いつものローカルオンボロバスである。キャンディー行きは300円くらい。バスは他の物価と比べて異様に安い。のどかな風景の中を走り、数日前に滞在したダンブッラを経由。やはり5時間くらいかかって3時過ぎに古都キャンディーに着いた。
ここには2500年前の仏陀の歯が祀られている、その名も仏歯寺があり、スリランカの聖地である。4世紀にスリランカに持ち込まれたこの歯は、常に時の権力者と一緒に移動してきた。ハルとお参りに行くと、歯が入った入れ物が見られるプージャまで一時間以上あるという。聞くと待ちたい、との意外な答えが帰ってきたので二人でのんびりとお寺で過ごした。18:30、プージャの太鼓の音とともに二階の宝物庫のような部屋が開けられ金ピカの仏塔のミニチュアみたいなものを拝めることとなった。これは流石にご利益がありそうで、二回も並んで見てしまった。
翌日は朝イチの電車に乗ってヌワラエリアへと向かうことにする。ガイドブックには世界一美しい車窓風景だという。それは流石に言いすぎだと思うけれど、たくさんの世界一があっていいし、世界一なら何個でも見れたほうがいい。
実は昨日電車のチケットを買ったのだけれど、1000円する一等席は一席しか余っておらず、これまた一席しか残っていなかった二等を買って挑んだのだった。でもいざ電車が来たら三等はガラガラだったというオチ。駅員さんに不思議がられながら三等に乗る。たぶん三等は200円とかかもしれない。でも庶民ばっかりで硬い椅子で、いかにもな異国感があって、結果的にはとても良かった。
世界一の車窓は、なんと我々の陣取った左側はずっと山側で、右側にしか絶景が広がらない・・・これはしまったと思いながら右ばっかり見ていると、二時間くらいして今度は左側だけが絶景となるパターンとなった。世の中はフェアにできているものだ。茶畑の中を蛇のように続く道、そしてそこを走るトラックやトゥクトゥクたち。清流が見え、滝が見え、こんなところに人がというような崖に集落が広がり、永遠と続く茶畑では今がそのシーズンなのか女性たちが頭に布を引っ掛けて茶を積んでいた。
4時間超の車窓を眺めるだけの旅が終わり、駅に着く。そこからバスで30分、避暑地であるヌワラエリアへ。たいして見たいものもないので、お昼だけ食べて、ティー工場に寄って、今度はバスでキャンディーまで戻ることにした。これまでか、というほどの茶畑がどこまでも続いた。車窓を眺めて移動しているだけの一日。移動が大好きな自分にはたまらなかったけれど、ハルは何を感じたのだろうか。