ヨセミテに来るのは、2回目。
前に見た光景を、昨日のことのように覚えている。
20歳のとき、グレイハウンドのバスやヒッチハイクでアメリカを周った。
イエローストーンに始まり、シアトル、ポートランド、ヨセミテからグランドキャニオン、サンディエゴにロサンゼルス。
数えてみたら、もう13年も前のことだった。やれやれだ。
アメリカに来るのも、実に7回目。どの国よりも多い。
いろんな人の親切に、常に助けられた旅だった。
ヨセミテではcamp4に泊まり、夜はいろいろな旅人やクライマーと語り合った。女性のクライマーがMSRの使い方を詳しく教えてくれたし、サンディエゴから来た人と仲良くなり、その後波乗りに連れてってもらったりもした。
ある日の夜、キャンプ場の近くの草原をみんなで散歩しに行った。
満月だった。
ヨセミテ渓谷から空を見上げる。
渓谷を囲む岩々は月に照らされ光り輝いていた。
昼間は頑固で堅苦しく、人を寄せ付けない装いをしているのに、満月に照らされた彼らは、ただただ美しく。
まるで宝石のようで、そして神々しかった。
月の本当の明るさを知ったのは、この時かもしれない。
ヨセミテが忘れられないで、また来たいと思ったのは、またその岩たちに会いたかったからだと思う。
夜、雨がやみ、月があがった。
森から出ると、ほぼ満月の月が、valleyを照らしていた。
夜10時。
マーセード川にまたがる橋から、月に照らされたvalleyを眺めているのは僕ひとりだった。
久しぶりに君らに再会できたことを、ただただ、うれしく思う。