遥かなるもの

ちょうど一年前の2月15日は雪がたくさん降った翌日で、我々は深夜に産婦人科へと向かったのであった。
彼がこの世界にやってきたのは朝の6時。手を大きく振りながら、精一杯叫んだ

babyborn02

2週間、名前を考え続けて、遥(はる)という名前にすることにした。自分はこれまで、旅行をするのが大好きで、遥か彼方に想いを馳せるのが大好きで、遥か彼方は自分にとって最も魅力あるものだったから、そこから名前を借りることにしたのだ。密かに心の中で、彼こそが自分に取っての遥か彼方なのかもしれない、と想像しながら。それを期待しているかというと、少し違うのだけど。

子どもを育てるということが、如何に大変かと思い知った一年だったと思う。しかも、これはあと十年以上続く、やれやれだ(笑)。もちろんその苦労と引き換えに、かけがえのない時間や幸福感を与えてもらっているのも事実だ。
予想以上に大変だったからか、一歳という節目など、永遠と来ないのではないかと思った。

でも、その日は明日あっさりとやってくる。2月16日、彼は一歳になる。ゼロ歳から見たら、ずいぶんとお兄さんだ。
なぜか、一歳になってしまうのが、成長してしまうのがちょっと寂しくて、ゼロ歳の彼に会いたくて今日は急いで帰って来た。ぎゅっと抱きしめて、泣かせながら一緒に眠った。お母さんじゃなくてごめんよ。

彼が遥かなるものかどうかなんて、やはりわからない。考えることでも期待することでもないのだろう。
ただ、間違いなく言えるのは、遥は我々がこれまで経験も想像もできなかった新しい何かをもたらしてくれるだろうということだ。そんな未来は今よりちょっと楽しいに違いない。

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