小さな小さな村へと行った。
Vallfogona de Ripolles。
友人のXavierとAnnaと8年ぶりに再会するためだ。
Barcelonaに居を構える彼らは、子どもができてからこの小さな村に家を建てた。週末用、ホリデー用の家。
南米を一年に渡って旅した後、都会だけの生活に耐えられなくなり、田舎にも自分たちの空間をつくることにしたのだという。
本当に久しぶりに会うのに、こんなにも自然に接することができるのはなぜだろう。
彼らは僕を家族だと言う。ラテンなノリなのかもしれないが、照れることもなく、ストレートに言ってくる。
ここはお前のスペインの家なのだ、と。
そんな言葉を10年以上も続けられて、本当に兄弟のような気がしている。異国にいても、心の身近な大切な存在。
「時間というのは、あまりにも気まぐれだな。」
夜になってXavierがぼそっと言った。
「俺たちが、あの日、あの時間あそこに居なかったら。お前があの日、あの時あそこに来なかったら。我々の時間はまったく交わることがなかっただろうし、今この瞬間の時間も存在しなかったわけだ。」
そう言い切れるだけの根拠が我々にはあった。
時間は実に気まぐれで、出会いはあまりにも偶然の産物だと。
XavierとAnnaと出会ったのはここだった。
1997年のモロッコ、サハラ砂漠。
サハラ砂漠が一目見たくて、絨毯屋に引き回され、ボラれ騙され連れてかれた、サハラの中の何もない宿。
そこで我々は出会った。
すぐに意気投合し、翌朝の日の出を見ようと、砂丘をいっしょに登って歩いた。
もう一度あそこで会えと言われても、二度と会えない、そんな出会いだった。
それだからか、12年経った今も、我々の関係は当時と変わらず続いている。もちろん、お互い年をとって、彼らには二人のもっとも大事なモノができたわけだけれど。
翌日、彼らに引きつられるまま、2人の宝物と一緒に5人で森にいった。
それはあの灼熱の、暑くて熱くてラテンなスペインからは、なかなか想像できない、穏やかな森だった。
きっとそれは、サハラ砂漠でランプの精がかけてくれた、気の利いた時間のいたずらだったのかもしれない。