トップページ

 

 
 

1.水下痢のハンガーノック
2.風の谷・フンザ
3.氷河の音と、星降る夜と
4.パスー氷河へ
5.4730m、クンジュラーブ峠

 
 

1.中国政府につかまる
2.パミール高原を駆ける
3.天上の世界から下界へ
4.ロバートからの手紙

 
 

1.カラコラムのサイクリストたち
2.旅行データ
3.海外サイクリングマニュアル

 

 

Karakoram Range
1. 水下痢のハンガーノック

 

「一緒に行こうよ。」とアンジェラが言った。彼女はネパールから自転車でやってきたイギリス人。髪をイスラム圏用にと短くし、体重も身長もそしておそらく腕の太さも僕を上回るタフな女性だ。その点僕はすでに恒例の水下痢にかかってしまったやわな男。
僕らは共にギルギットを後にし、カラコラム・ハイウェイを北に向かって走り出した。「ハイウェイ」とは名ばかりの、緑豊かな村の中を行く穏やかな道だった。

   

日本からイスラマバードまで空を飛び、このギルギットへは陸路を通ってきた。僕のカラコラム・ハイウェイはこの地から始まる。ギルギットはパキスタン北部を旅する者にとって拠点となる町である。誇りくさい路地にバザールの臭いがミックスし、その独特の雰囲気に思わず長居がしたくなる。ここからK2のベースとなるスカルドゥや辺境地チトラル、そして標高8125mのナンガパルバットまでは目と鼻の先だ。
ギルギットの標高は約1500m。ここからパキスタンと中国の国境、標高4730mのクンジュラーブ峠まで、カラコラム・ハイウェイは徐々に標高を上げていくのだ。

   

道はやがて、想像していた通り、切り立った険しい山の合間を進む、砂漠の中の道となった。

途中北から南下してきた2人のスイス人サイクリストとすれ違う。昨日も宿にカナダ人の自転車乗りが2人いたし。やはりここは僕が思っていたとおり、今でもサイクリストのメッカなんだなあ。
 それにしてもあついあつい。腕の「プロトレック」を見るとなんと気温が38℃となっているではないか。自分の体温で冷やされて38℃を指しているので、実際の気温はもっと高いのであろう。今日は朝からひどい下痢であまり食料をとっていなかったので体がフラフラしてくる・・・

乾燥して木も生えない岩山に睨まれながら進むと、山の間に時折7788Mのラカポシが顔をのぞかせる。「ようこそカラコラムへ」万年雪を抱いた顔が微笑んでくれているようだった。

      

しかし感動も束の間。水下痢=食料の摂取なし=灼熱の中の運動、と悪い図式の答えは流行りの熱中症もどきのハンガーノック。目標としていた村までたどり着けずにGulmet のホテルに着くや14時間耐久の深い眠りに落ちたのであった。
かつてユーラシア大陸を自転車で横断した男は一体どこに行ったのだろうか。

 

▲top


All text and images © 2007 tabibum . All rights reserved